ベルナール・アルノー語る

ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る
LVMHグループを築き上げたフランスの実業家ベルナール・アルノーのインタビュー形式の対談集。

対談集というよりは、質疑応答形式といった感じで、あまりキャッチボールが弾まない。淡々と質問と回答が続いていく。

気に留まったことは

  • ルノーは、フランスのエリート理工系大学の出身であること。しばらくは実家の家業である建築会社で幹部をしていた。ブランド業界とは一見関係のないように見える。
  • 中央集権型の経営は行わず、グループ傘下の企業は独立した経営を行う。中央集権型の経営ではかならず破綻すると考えている。独立性の高い企業の集合体である。
  • LVMHグループでは今まで各企業が独立に行っていた生産ラインをまとめられる部分はまとめ、高効率化をはかる。
  • 発展途上のブランドを育て上げていくことに喜びを感じる。
  • ディオールといった安定して多くのキャッシュフローを生む中核企業がグループにいるおかげで、発展途上のブランドを育てていくことができる。ディオール無しではうまくいかないはずだ。中核ブランドが生んだお金で他のブランドを育てあげ中核ブランドに仕立てげる。この繰り返しだから発展に終わりはない。
  • IT産業にも早くから目を付けていた。フランスのマーケットサイトやポータルサイトに投資を行っている。マイクロソフトには目を付けていたが投資しなかったことを悔やんでいる。
  • LVMHはアルノーのグループではない。伝統的なブランドをまとめたという名声だけで十分である。
  • LVMH以外に投資会社グループアルノーを経営している。
  • インターネット上での販売はブランドの価値を下げない。こんな高いものを実物を見ないで買う人などいない。

この人は非常に落ち着いた印象を受ける(翻訳の仕方にもよっているだろうが)。見た目も非常に紳士でスラっとした品の良い印象だ。経営者ではあるが起業家といった感じではない。
既に存在する企業を買い取って大きくなって行くというのは、ホリエモンなんかの影響ですっかり悪いイメージ定着したM&A型の経営なんだろう。そんな悪い印象とは違い、傘下に入った企業の経営者との関係は良好であるようにみえる。お互いの利益になるということで、友好的に傘下に入ったのだろう。そう思わせるだけの強力な説得力やビジョンをアルノーさんがもっていたとも言える。

こう言ってはなんだが、アルノーさんはゲームをしているように見える。各傘下ブランドが駒で、プレイヤーがアルノーさん。実際の経営は各ブランドに独立して行わせて自分は、ひょいひょいと上の方を飛び回って観察して時々いじってみる。しかし、それがうまくいっているこつだったりするのかもしれない。第三者の目とは言わないが客観的に見る目が必要で、管理対象の実務も深く入っていってはいけないんでは。たとえやる余裕はあっても。

こんな立場にいる人はやっぱり、強力なビジョンを提示していける人でないといけないと思う。精神的指導者みたいな。何しろ実務的なことはできませんから。
抽象的であっても明確なビジョンを提示して、部下をその気にさせる力。こういうのってビジョンが同じような内容でもその気にさせる力は人によって違うだろうなぁ。

自信・落ち着き。欲しい。