風の谷のナウシカ

風の谷のナウシカ 全7巻箱入りセット「トルメキア戦役バージョン」
※ネタバレ注意

以前から気になっていた、風の谷のナウシカのコミックを読んでみた。映画版では全7巻のうち、2巻目の半分くらいまでしか描かれていない。その後長いストーリーが続くことになる。かなりの量はあるが、非常に面白かったため一気に読んでしまった。

2つの大国の間で勃発した戦争で、蟲や粘菌を兵器として用いようとしたために、腐海の蟲達が大移動を始め戦争どころの話ではなくなるというストーリー。蟲や粘菌を兵器として使う技術は、古代文明の墓に代々伝わってきた技術である。最後にはこの古代文明の墓の主の正体が暴かれることになる。墓の主の正体は、腐海に覆われた長い浄化の時代が終わった後、復活を遂げようという古代文明の人間達の意思であることがわかる。最後にナウシカ達が目撃する主の姿は、現代の我々のような姿形をしている。彼らは復活の時に向け、細々と暮らしている外の世界の人類の助けを必要としており、その時々に皇帝や王となった者を操っていた。ナウシカらはそんな愚かな墓の主を破壊し、腐海や蟲達と共存していく平和な道を選ぶ。

非常に良く考えられたストーリーだと思う。戦争、人種差別、環境問題、現在の我々が抱える問題が全て含まれていたりする。ナウシカはこれらの問題を解き放っていく。ナウシカが意図して行動したわけでなく、ナウシカの行動が、周囲の者を自然と問題を解き放つ方向に進めさせる感じであるが。もののけ姫もそうであるが、宮崎駿の作品は、我々人類に対する教訓的な話と、違う世界感をもった世界との話を結びつけることが多い。この世にもう一つ別の世界があって、そこでは我々と同じような問題に遭遇しており、それを解決する過程を描いたもの。ただ教訓的な話ではつまらないが、別の世界の世界観、描き方が非常に面白いから評価されるんだろうとおもう。

そんな、まったく違う世界で進んでいる話と思いきや、このナウシカでは我々現在の人類を想起させるような墓の主が出てくる。そこで、またハッとさせれてしまう。